日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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45 巻, 2 号
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原著
  • 武田 純弥, 佐藤 多佳子
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,小学校中学年説明的文章の読解における反証に着目した批判的読みの様相とその形成過程を明らかにし,実践的示唆を得ることを目的に実際の学習者を対象に授業実践を行った。学習者の感想記述の量的分析から,批判的読みが可能になる水準に到達した学習者数の有意な増加が認められた。また,その過程における学習者の発話と記述の質的分析から,反証が,筆者の主張の前提条件として作用していることを読む姿が見られた。さらに,前提条件を変化させることで,多様な論理展開が可能になることを自覚化し,反証は,筆者の主張の説得力を増す機能があることを方略的に読む姿も見られた。以上の分析結果から,小学校中学年における反証に着目した批判的読みは,「多様な論理の可能性の自覚化」や「筆者の主張の説得力を増す機能をもつことを方略的に読むこと」が可能となる段階であることが示唆された。

  • 堤 健人, 谷田 親彦
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 13-24
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本稿では,中学校技術科で育成する資質・能力の構造に基づき,設計・計画に活かされる知識の習得を促す学習の枠組みを開発し,授業実践を通して事例的にその効果を検証することを目的とした。2016年に公表された中央教育審議会答申等から技術科の学力構造を捉え直し,開発した学習の枠組みを「技術との関わりの形成」「個別の知識の獲得」「生きて働く知識の習得」「知識の活用に向けた関係性の把握」「設計・計画における知識の活用」で構成した。この枠組みを基に,中学校第2学年(79名)を対象として,市販のLEDセンサライトを分解して回路を調べながら知識を習得し,作物を育成するLED照明の電子回路を設計する学習過程を含んだ全3時間の授業を実践した。その結果,本実践においては製品の分解を通して開発者の思考や工夫に気付きながら習得した知識が,電子回路の設計場面で活用される姿が見られた。

  • 池田 匡史, 藤川 千穂
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 25-38
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本稿の目的は,高等学校の古典教育における和歌学習において,これまで十分に展開されていなかった,和歌の〈感じ〉を読むことを目指す学習を開発することにある。

     従来の和歌学習では,和歌の修辞法の確認や直訳など,散文での説明的な活動のみが展開されていたとされる。しかし和歌文学研究では,散文によって直接説明できない,言語化不可能な〈感じ〉の側面も指摘されてきた。このことを踏まえると,和歌の〈感じ〉の面を読む学習の開発が求められる。

     これらを踏まえ,本稿では,高等学校一年生を対象とした実践を開発するとともに,展開した。その結果,学習者は和歌伝統やその和歌から読みとれる〈感じ〉を踏まえて和歌を読むことの重要性を自覚するに至った。

  • 大後戸 一樹, 佐藤 走, 中西 紘士
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 39-49
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究の目的は,教職大学院の「学校における実習」を2校の公立学校で行った学部新卒院生が,その成果と課題をどのように捉えていたのか,その実習時期や実習校の違いに着目して事例的に検討することであった。そこで,教職大学院生1名を対象に,全4期(計10週間)の実習後に行ったインタビューの分析を行った結果,対象者が対応力について自信を深めるほどに成長した契機には,学校の風土や子ども像が大きく異なる2校でアクションリサーチ実地研究が実施されたことが大きな要因であると推察された。また,実習1期にT2として児童の個別の課題に注意し指導の手応えを得たことや,実習3・4期にT1として「安心できる雰囲気」に支えられて「ある程度の挑戦」に挑めたという経験が有効に機能したことも推察された。

  • 俣野 知里, 泉 惠美子
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 45 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2024/05/24
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,小学校における外国語専科教員の現状に関する認識を明らかにすることを目的とし,単独校勤務3名と複数校勤務3名の専科教員を対象にオンラインによるフォーカス・グループインタビュー調査を実施した。

     その結果,6名の専科教員は,学習集団としての育ちが異なる学級差への対応やそのための児童理解を課題として捉えていることがわかった。一方,児童の変容や児童・同僚からの声掛けがやりがいにつながっており,他教員との協働や研修の充実を願っていることも明らかになった。

     また,学級担任と異なり複数学級の指導を担当する専科教員は,当該学級の担任などこれまで以上に多くの教職員との連携が必要になっており,よりよい指導の実現に向け,他の教職員や専科教員同士の連携の在り方を模索している現状が明らかになった。

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