2023 年 46 巻 1 号 p. 1-11
本稿の目的は,1つの定理に対する多様な証明を生かした相互作用を分析する視点を設定することである。本稿では,数学の授業で生じる証明の多様性を生かした相互作用の視点として,Voigt(1995)による2つの視点「相互作用のパターン」と「相互作用におけるテーマ的パターン」を援用し,前者に「比較パターン」と「議論パターン」の2つ,後者に「証明の方法」と「証明の構造」の2つを設定して視点の枠組みを提案した。その枠組みを用いて,中学3年の1つの証明問題を取り扱った授業実践を分析した。その結果(ⅰ)多様な証明を生かした複雑な相互作用を比較パターンと議論パターンに区別して分析できること,(ⅱ)相互作用におけるテーマ的パターンを証明の方法と構造に区別して分析することで,生徒たちがどのように証明を理解していくのか,別の証明をどのように生成していくのかを記述できることが明らかになった。