2023 年 46 巻 1 号 p. 51-63
本研究は,文脈を基盤としたアプローチの方略や評価に焦点を当て分析・検討を行い,防災教育における文脈を基盤としたアプローチを用いた単元を開発し,災害に備える態度の育成と科学についての知識の必要性を認識させることを意図した授業実践を試行した。その結果,文脈を基盤としたアプローチの特徴として,学習の文脈を規定し関連する科学的知識と共に必要に応じて取り入れる考え方を中心に,学習内容の螺旋型配列や,科学的考えを点在的に配置し繰り返し学習に用いるドリップ・フィードアプローチの有効性が確認された。また,授業実践前後によるアンケートの分析から災害に備える態度と科学についての知識の必要性の認識の変容を考察した。その結果,態度の変容は,「調べる」,「知る」,「話し合う」との単語の繋がりの変化や広がりに現れること,これらの単語のネットワークが再構成され,態度の育成に寄与することが推察された。科学についての知識の必要性の認識は,違う立場の人と理科の見方・考え方をもとに話し合うことで向上することが推察された。