2023 年 46 巻 2 号 p. 1-11
現在,性の多様性への学校教育での取り組みは,いじめの実態等をふまえ,教育相談や人権教育など教科外で行われることがほとんどである。だが,各教科の教科書には性の多様性が徐々に取り上げられており,教科教育においても性の多様性への取り組みを充実させていく必要がある。こうした問題意識から本稿では,性の多様性にかかわるいじめ防止の一環として,国語科における語彙の質的側面への指導に着目し,性をめぐる多様な見方・考え方の育成について検討した。そして,ジェンダー化された社会構造の視点から学習対象となる語句と,性の多様性をめぐる学習者の多様な背景や価値観とを結ぶことで語彙の質を高め,学習者自身による語彙の再構築を通して,性をめぐる見方や考え方の多様化をめざす学習活動を具体化した。また,こうした語彙指導の提案が,国語科教育を社会変革の場として機能させていくと指摘した。