2023 年 46 巻 2 号 p. 25-34
本研究の目的は,「参加と責任のシステム」としての社会科の評価活動において,民主主義の「苦労の当事者」となる社会科教師自身が,評価に係る子どもたちからの異議申し立てによってどのような「問題」と向き合うなかで,何を学び,自分自身がどのように変容したと考えたのかを明らかにしていくことである。「参加と責任のシステム」を,熟議民主主義における鍵概念である「正当性」と「反省性」を援用して精緻化するとともに,「話し合いへの参加者としての教師」と「話し合いの調整者としての教師」という役割概念を導入し,分析を試みた。その結果,子どもたちからの異議申し立ては,教師に「教科経営論理の明晰化」と「お互いに合意をつくろうとする『自分と子どもたち』を包括的に捉える第三者的な視点への断続的な問い合わせ」という「問題」をもたらしていた。それらの「問題」を乗り越えようとするところに,「民主主義を実践する教師」が生成されていくことが明らかになった。