2024 年 46 巻 4 号 p. 11-22
特別支援学校学習指導要領の改訂によって,音楽科では新たに「創作」が記され実施が明確に求められるようになった。これまでも,特別支援教育において創作活動の実践や研究が報告されていたが,多くの場合,障害による特性を配慮して,偶然的,即興的な実践であった。 そこで,本稿では,拍子やリズムの指定という条件に沿った創作活動を実施し,その検討から発達および音楽的な知識や技能に応じた創作活動の実態を明らかにするとともに,支援の方法について示唆を得ることを目的とする。実践では,知的障害のある特別支援学校高等部の生徒を対象に,リズム創作と旋律創作を行った。それぞれの1時間目の授業から,生徒の活動中の様子を観察し,表現の内容を分析した。
結果,創作することを理解し,リズム感や音高感がある生徒は,創作ができ,クラスメイトの演奏を模倣し合うなかで,表現が広がった。創作することを理解しているものの,リズム感や音高感が曖昧な生徒は,始めは戸惑いがあったが,周りのクラスメイトの様子を模倣することで,きっかけをつかみ創作することができた。創作することの理解が難しい生徒は,クラスメイトの演奏の模倣は見られたが,創作には至らなかった。このように,生徒たちは,創作活動の初期の段階において,模倣を取り入れ,創作活動の導入・展開及び,活動の場に参加する手段としている様子が観察された。これらのことから,模倣は,知的障害のある生徒の創作活動の支援に活用できることが期待できる。