日本サンゴ礁学会誌
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原著論文
石垣島宮良川沖沿岸海域表面水中のケイ酸塩,リン酸塩,及び溶存カドミウムについて
阿部 和雄福岡 弘紀
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2008 年 10 巻 1 号 p. 59-70

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抄録
沖縄県石垣島宮良湾沖合域(岸からの距離約1800,2700,3900 m)及び宮良川河口において,2006年8月から2007年12月まで一月に一回程度の間隔で表面水中のケイ酸塩,リン酸塩,及び溶存カドミウム濃度を定量した。塩分・水温から見た沖合域の海域特性は,一般に宮良川からの淡水流出及び気温変動の影響を受け,12-5月の低水温・高塩分傾向,6-10月の高水温・広範囲な塩分分布,及び11月の中間的な傾向を示す周年変動が認められた。沖合域で観測されたケイ酸塩,リン酸塩,及び溶存カドミウムの濃度変動は周年を通して顕著ではなく,最大でそれぞれ7 μM,0.13 μM,32 pM程度であった。この調査海域はサンゴ礁に隣接しており,一部の海水は礁内の海水交換に伴い外洋水として礁内へ流入する。調査海域で得られたリン酸塩やカドミウム濃度は現在のところ富栄養や重金属汚染等の兆候はなく,実際の栄養塩とサンゴ生育の関係等から判断すると,隣接するサンゴ礁生態系への当海域からの富栄養等の影響は小さいものと考えられる。
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© 2008 日本サンゴ礁学会
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