日本サンゴ礁学会誌
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総説
サンゴ骨格の発光バンドの発光原因と環境指標としての可能性
岨 康輝渡邊 剛島村 道代坂本 竜彦長尾 誠也
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2010 年 12 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

熱帯から温帯に生息する造礁性サンゴの骨格は,紫外線を照射するとバンド状に発光する(以後,発光バンドとよぶ)。これまでに,発光原因として,サンゴ骨格を構成する炭酸塩鉱物の微量元素,サンゴ骨格中に含有する有機物(特に腐植物質),骨格構造に起因する空隙(孔隙)等が挙げられている。その中でも,腐植物質は発光の主要因であるとされ,サンゴ骨格中やその周辺環境に存在する腐植物質が研究されてきた。一方,骨格の低密度部位と発光バンド部位が一致することが報告され,発光バンドの発光強度が骨格構造に依存する可能性が指摘されているものの,特定の発光要因の解明には至っていない。発光バンドは過去の降雨や河川の氾濫(洪水)の高時間分解能の環境記録として利用されてきており,サンゴの発光バンドを信頼性の高い古環境指標として用いるために,厳密な発光メカニズムの解明と環境要因との関連性の検討が望まれる。

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© 2010 日本サンゴ礁学会
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