日本サンゴ礁学会誌
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総説
海洋・沿岸域の総合的管理によるサンゴ大規模白化対策に向けて
古川 恵太
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2017 年 19 巻 1 号 p. 151-160

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抄録

健全な海洋・沿岸域は,人々に水と酸素を供給し豊かな恵みをもたらすことで,貧困の根絶,食糧の安全保障,人々の雇用,観光,自然災害からの防護等,重要な役割を果たしてきている。この海洋・沿岸域を持続的に保全・再生・利用していくためには,「海洋・沿岸域の総合的管理」により海洋・沿岸域の諸問題を総合的に,かつ関係者が主体となって対処する制度・体制を構築してくことが肝要である。本稿では,まず海洋・沿岸域の総合的管理についての世界の現状,日本の現状を解説し,問題解決手段としての海洋・沿岸域の総合的管理を解説した。その上で,竹富町の海洋基本計画の実施などを例にとり,自然の理解に基づく対策と住民参加に基づく対策を融合させ,人材育成をしながら事業・制度を充実させ,国や世界の動きと連携した重層的な取り組みを推進していくことにより,サンゴ大規模白化対策に向けた取り組みの礎を作っていくことが肝要であることを示した。また,地域の内外の取組みをネットワーク化し,水平展開することで,対策実施を地域的な取り組みにとどめず,わが国挙げての事業として,さらには国際的な取り組みの中で世界の先進事例として実施していくべきであると指摘した。

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© 2018 日本サンゴ礁学会
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