日本サンゴ礁学会誌
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原著論文
沖縄県サンゴ礁保全再生事業における無性生殖を利用したサンゴの種苗生産と植込み技術の段階的進歩
比嘉 義視新里 宙也座安 佑奈長田 智史中村 良太横倉 厚謝名堂 聡大森 信
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2018 年 20 巻 1 号 p. 21-37

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抄録

沖縄県のサンゴ礁保全再生事業(2011-2017)は,「面的広がりのあるサンゴ植込みの実証事業」とサンゴ植え付けに関する技術的情報を補完するための「さんご礁再生に関する調査研究」を実施し,事業終了の時点で,3ヘクタールの適地に10万本以上のサンゴ種苗を植込み,育てることを目標に実施された。本報告は,3年間(2012-2014)に恩納村地先で行われた無性生殖を利用した種苗生産と植込みの結果を2016年5月までのモニタリングの結果を基に報告し,この間になされた移植技術について考察したものである。種苗は鉄筋を用いたひび建て養殖で育成した親株から採取したミドリイシ属で,このうちウスエダミドリイシAcropora tenuisについて遺伝子型を判定した結果,親株にはかなりのクローンが含まれていることが判明した。他方,天然サンゴにはクローンはなかった。植込んだ種は2012年は15種,2013年は12種であったが,2014年は成長が速く比較的高温耐性の強そうな6種が選ばれた。3年間に植込んだ種苗数は31,264本である。2012年と2013年は中間育成をせず,幾何平均径GMDが4cm程度の種苗を植込んだ。成長速度はそれぞれ,3.7cm/年と7.5cm/年であった。一方,2014年は3-6ヶ月の中間育成を行い,約8cmの種苗を植込んだ。6種平均の成長速度は12.0cm/年になった。台風や高温に見舞われた2012年植込みサンゴの1年後の生残率は28%,約4年後には14%以下になった。2013年植込みサンゴの生残率は約1年後64%,約3年後48%であった。 いくつもの技術改良を加えた2014年植込みサンゴの2年後の生残率は63%以上で,3年後の生残率50%以上が期待される。種苗生産,中間育成およびモニタリングに要した費用は種苗1本あたり約2,000円であった。

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© 2018 日本サンゴ礁学会
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