日本サンゴ礁学会誌
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総説(川口奨励賞受賞記念論文)
最終氷期極大期以降のサンゴ礁形成史
本郷 宙軌
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2024 年 26 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

近年,サンゴ礁は気候変動と人間活動が引き起こす攪乱要因によってサンゴの被度,サンゴ礁の面積が減少傾向にある。一方で近年の海水準上昇がサンゴ礁の成長を促している例も報告されており,今後もサンゴ礁が形成されるのか関心が高まっている。本稿ではまず,サンゴ礁形成過程を復元するために重要となる掘削試料および離水サンゴ礁での研究方法をまとめた。また,サンゴ礁形成過程においてサンゴの属名と群体形が注目されていたが,サンゴ礁形成においてサンゴ種(鍵種)も重要な役割を持っている可能性が明らかとなってきた。しかし,鍵種に注目した研究例が少ない点や鍵種の同定方法など解決すべき課題が多いことも明らかとなってきた。今後,サンゴ礁の将来予測を行うには,サンゴ礁形成に関わる条件を詳細に明らかにすることや,サンゴ等の被度のモニタリングに加えて,サンゴ礁の上方成長速度と海面上昇速度もモニタリングしていくことが不可欠である。

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