西表島網取湾北西礁斜面の水深3 mから40 mの範囲で,1 m2のコドラートを用いて造礁サンゴの定量分布調査を実施した。全39個のコドラートの水中写真とコドラート内で見られた造礁サンゴの生時拡大写真をもとに,12科36属103種の分布を確認した。コドラート内に出現した造礁サンゴの被度と種組成のデータを用いてクラスター解析を行った結果,網取湾北西礁斜面では,識別可能な造礁サンゴ群集が顕著な帯状(垂直)分布パターンを示していることが明らかになった。本研究で記録された全ての種の被度,分類群および成長形の相違に基づいて,この礁斜面を特徴づける22の造礁サンゴ群集を定義した。これらの群集は,網取湾の造礁サンゴの種多様性保全のための生態学的データを提供するだけでなく,琉球石灰岩などの第四紀サンゴ礁性堆積物・石灰岩の古環境指標(特に古水深)としても役立つことが期待される。