抄録
造礁サンゴの白化は、宿主のサンゴが十分な無機栄養を褐虫藻に供給できないために褐虫藻が逃げ出すことにより起こるという仮説を検証することを目的とし、飼育海水にアンモニウム塩やリン酸塩を添加することにより、高温にさらしたサンゴの白化を防ぐことができるかを調べた。アザミサンゴ Galaxea fascicularis の単離ポリプを、100μM NH4Cl又は10μM Na2SO4を含むろ過海水、および無機栄養塩を添加しないろ過海水中で、高温ストレス (32℃) 下で9日間飼育した。褐虫藻密度と単位面積あたりのクロロフィル量は、ストレス処理前に比べ、無機栄養塩添加の有無に関わらず、約1/2に減少した。この結果は、高温ストレスによる褐虫藻密度の減少は、宿主による無機栄養の供給が減少するためではないことを示す。