日本サンゴ礁学会誌
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ハナヤサイサンゴに同所的に生息する6種のサンゴガニ類の個体群構造と共存機構
土屋 誠平良 あゆみ
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1999 年 1999 巻 1 号 p. 9-17

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抄録
ハナヤサイサンゴに同所的に共存するサンゴガニ類の種組成とサイズ分布の季節変動を調べ、複数のサンゴガニ類が共存する機構について解析した。すべての種の抱卵個体が通年存在したことから、6種とも年間を通して新規定着する可能性を示したが、実際には年間を通して定着すると予想される種 (カバイロサンゴガニ、カノコサンゴガニ) と、特定の時期に小型個体が認められなかった種 (サンゴガニ: 4-8月、アミメサンゴガニ: 2-3月) があった。クロサンゴガニの小型個体は7月と10月にのみ採集された。ハナヤサイサンゴの大型群体の中には1種あるいは2種のサンゴガニ類が生息しているものがあり、サンゴガニ類間での排他行動の存在を予想させた。一方では6種すべてが生息している群体もあった。種間関係において明確な順位の存在は確認されていないので、新規定着個体や移動個体は強力な競争者がいない時期に侵入可能であろう。これらのカニはハナヤサイサンゴ類を生息場所とし、ホストが生産する粘液を食物としているという特徴があり、極めて類似した生息環境を要求している。従って、1) 種によって異なった定着期を持つ、2) 排他行動は弱い、3) 小型個体と大型個体が同一サンゴ群体内で棲み分ける、等の特徴を有することにより共存可能になると考えられる。
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