日本作物学会紀事
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良食味水稲品種における少数パネル·多数試料による米飯の食味評価
松江 勇次佐藤 大和尾形 武文
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2003 年 72 巻 1 号 p. 38-42

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抄録

固定した同一少数パネル·多数試料による食味官能試験精度について, コシヒカリと同程度の食味レベルを有する品種群 (良食味品種群) を供試した場合と, 食味レベルが高い品種から中庸な品種, 劣る品種までが混在した品種群 (食味混在品種群) を供試した場合とを比較して識別能力や嗜好性などを検討した. 良食味品種群の食味評価値の分散分析の結果, 総合評価ではパネル構成員間および品種間において0.1%水準で有意差が認められたが, パネル構成員と品種との交互作用は有意でなかった. よって, 総合評価についての評価は各パネル構成員による差はあるものの, パネル構成員全体による品種間差の評価に一定の傾向があることを示した. また, 識別能力の高いパネル構成員は, 全体の嗜好性との一致性も高い傾向にあることを示した. 各パネル構成員の識別能力についてみると, 良食味品種群における5%F値の高い識別能力を示したパネル構成員は17人中5人と, 全体の約30%であり, パネル構成員の約80%が識別能力を示した食味混在品種群に比べて大きく下回った. 以上のことから, 良食味品種群においては識別能力を有するパネル構成員は小ないが, 総合評価の品種間差の最小有意差 (LSD (0.05)) は0.27と小さく, パネル全体として品種間差の判定は有意であったことから, このような試験方法を用いて食味官能試験を行っても大きな支障はないと判断された. また,食味検定材料の食味レベルがコシヒカリと同程度の場合では, 各パネル構成員の識別能力の把握よりもパネル全体の識別能力を把握することがより重要であることがうかがえた.

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© 2003 日本作物学会
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