日本作物学会紀事
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極早生水稲の分げつ体系からみた高位分げつの発生機構
松葉 捷也
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2003 年 72 巻 1 号 p. 62-67

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抄録

農林11号など, 日本の水稲品種の中で最も極早生である3品種を北陸地域の普通期に栽培して, その分げつ体系の形態形成を調べた. 主稈総葉数は, 農林11号が9, 農林9号と同15号が10となった. 分げつの出現は北陸地域の普通期の栽培品種と同様に推移し, 1次最終分げつは, 3品種とも基本的に主稈の第8節に出た. 分げつは4次分げつまで現れた. この結果, 高位分げつが多発生し, それらの葉数が, 分げつ発生節位より上の母茎の葉数より1,2葉多かった. 各個体の分げつ数は40本前後であり, 出穂期間は約3週間に及んだ. 高位分げつの発生節位の下限は, 1次分げつについてみると, 主稈の穂首分化期に, 分げつ芽が突起状の状態から1,2枚の葉原基を分化した状態にある節位と判断された. その節位は, 農林9号, 同15号, 同11号で, それぞれ7, 6, 5であった. これら高位の最終分げつの葉数 (前出葉を含む) は, 本試験では分げつ次位に関わらず, 3か4が多かった. この葉数の理由は, 以下のように考えた. すなわち, 主稈の穂首分化期以降, 突起状になっている1次の分げつ芽は, 主稈の生育がさらに約2.5葉齢進んだ後でないと, 自身の穂首分化に至らない生理機構をもっている. 他方で, 農林9号の発育解剖の結果では, 上記の主稈の生育期間に, 分げつ芽は前出葉と2, 3枚の葉原基を自立的に分化している. それで, 高位の最終1次分げつは, 常に3, 4枚の葉数を持つことが理解できる. 同じことは, 一般に母茎とその分げつの間で生じていると推測された.

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© 2003 日本作物学会
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