抄録
テンサイ (Beta vulgaris L.) 単胚性系統の採種個体に散見される複胚珠果実に関する選抜育種ならびに遺伝解析を効率的に進めるため, 本実験では, 個体レベルの主茎および分枝における複胚珠果実の着生·分布様式, ならびに個体単位における開花前と登熟期の複胚珠率の関係について検討した. その結果, 複胚珠果実は, 分枝の主茎着生位置により下位から上位に向かい多くなり, 分枝間では, 一次分枝が二次分枝より多くなった. 各分枝の複胚珠果実は千粒重の増加に伴い多くなり, 個体単位の複胚珠率が低下するに従い, 主茎を除く各分枝の複胚珠率は同程度に低下した. また, 個体単位の複胚珠率は二次分枝を持つ最も上位の分枝の複胚珠率に近似した. 二次分枝を持つ一次分枝の複胚珠果実の分布は分枝の中間に多く, 先端に向かい少なくなった. これらの結果から, 複胚珠果実の形成は, 主茎および分枝における無限伸育性に伴った開花の早晩による果実の発育程度と密接に関係していることが示唆された. 開花前と登熟期における複胚珠率に関しては, 開花前の複胚珠率が登熟期より明らかに高かったが, 両者の間に正の相関関係が認められた. このため, 複胚珠果実の着生は, 開花前に遺伝的に支配されているが, 受粉後の胚珠の発育環境により最終的に決定されるものと考えられた.