抄録
1992∼2001年に, 福岡県南部筑後地域の古くからのかんがい用水路であるクリークの水質を, 筑後川と矢部川を主水源とする河川別に計11カ所, 水稲の代かき期から登熟期及び非かんがい期に調査した. 両水系のクリークともに全窒素及び化学的酸素要求量の平均値は水稲の農業用水基準値を超えていた. 溶存酸素, 浮遊物質, 全リンを除くほとんどの項目で水稲かんがい期よりも, 非かんがい期の方が高い値を示した. 水質の年次変化から判断すると, ここ10年間では汚濁の進行も改善も認められなかった. 全窒素の年次変化も認められなかったが, 無機態窒素であるアンモニア態窒素及び硝酸態窒素の年次変化は大きく, 特に非かんがい期の値の変化が大きかった. 水稲生育期別に比較すると, 分げつ期で筑後川水系及び矢部川水系共に全窒素に占める硝酸態窒素の割合が高かった. 農業用水による窒素流入量推定値と既存の標準窒素施用量から判断して, 2回目の穂肥の40%は削減可能であると示唆した.