日本作物学会紀事
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栽培
ナイルデルタにおける栽植密度および窒素施与量がイネの収量·収量構成要素·乾物生産におよぼす影響
難波 輝久
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2003 年 72 巻 2 号 p. 133-141

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抄録

エジプト·ナイルデルタの1980年代における水稲 (Oryza sativa) 栽培は, 大株·疎植 (株あたり苗本数19∼23本, 栽植密度15株m-2), 低窒素 (10 g m-2) による移植法が慣行的であり, 精籾収量は650 g m-2であった. しかし, 本地域の生育期間中の平均日射量は26 MJ m-2 d-1と極めて高く, 栽培方法の改善により飛躍的な増収が期待された. そこで, 品種Giza 172を供試し, 栽植密度 (17, 33, 50株m-2) と窒素施与量 (0, 5, 10, 15, 20, 25 g m-2) 処理とを組み合わせた圃場試験を実施し, 最適栽培法について検討した. 栽植密度50株m-2と窒素施与量15, 20 g m-2および33株m-2と20 g m-2の組み合わせにより, 単位面積あたり籾数は63000∼68000粒m-2, 登熟歩合は86∼93%で収量は1470∼1570 g m-2と高収であった. これらの組み合わせにおける個体群生長速度 (CGR), 葉面積指数 (LAI) および純同化率 (NAR) は, 全生育期間を通じてほぼ同等で高く推移し, とくに登熟期のCGRおよびNARは極めて高かった. 栽植密度や窒素施与量が少ない (17株m-2, 0∼10 g m-2) 組み合わせでは, CGRおよびLAIは全生育期間を通じて小さく, また, 窒素を多施与 (25 g m-2) すると, 倒伏発生により登熟期におけるCGR, NARおよび登熟歩合は著しく低下し, いずれの栽植密度でも低収となった. 以上の実験結果を総合的に判断して, 本地域において1400∼1500 g m-2の多収を得ることが可能であり, このためには栽植密度33株m-2, 窒素施与量20 g m-2が適正であると結論した.

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© 2003 日本作物学会
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