日本作物学会紀事
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栽培
暖地における早播きした秋播性コムギ「イワイノダイチ」の葉および茎の発育
福嶌 陽楠田 宰古畑 昌巳
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2003 年 72 巻 2 号 p. 142-148

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抄録
早播きした秋播性コムギ「イワイノダイチ」における出葉過程, 茎の伸長過程およびそれに伴う葉位·節位別の葉·茎の形態変化を明らかにするために, イワイノダイチと春播性コムギ「チクゴイズミ」を11月上旬の早播きおよび11月下旬の標準播きで栽培した. 出葉過程は播種期, 品種によらず温度と密接な関係にあり, 出葉間隔 (°C) は, 生育期間を通じて一定であり, 早播区が標準播区より長く, イワイノダイチがチクゴイズミより短かった. 葉位別の葉身長·葉鞘長をみると, 早播区ではイワイノダイチはチクゴイズミより葉身·葉鞘が急に長くなる葉位が高かったが, 標準播区では品種間差異は認められなかった. 上位葉の葉身長はいずれの品種も播種期が早いほど短く, 低温によって葉身の伸長が抑制されることが示唆された. また, イワイノダイチはチクゴイズミより止葉の葉身·葉鞘が短く, 葉身幅も短いという特徴が認められた. 茎の伸長過程をみると, 早播きではイワイノダイチはチクゴイズミより茎立ち期が遅いが, 出穂期や開花期はほぼ同じであった. 稈長はいずれの品種も早播区が標準播区より長かった. これは早播区では生育期間の長期化に伴い総葉数や伸長節間数が多くなったためと推察された. また, イワイノダイチはチクゴイズミより上位節間の長さが相対的に短いという特徴が認められた.
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© 2003 日本作物学会
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