抄録
食用カンナ (Canna edulis Ker-Gawl.) の不定根は, 地中深く貫入する垂直根と地表近くに分布する水平根とに区分できるが, 垂直根のほとんどは2本1組となって発生する不定根のうち根茎基部側の1本に由来する傾向があり, 垂直根と水平根における機能分化の視点で呼吸速度の差異について検討した. 気相型酸素電極装置を用いて, 一定の長さに切断した不定根の呼吸速度を生育時期別, 株元からの距離別, 伸長方向別に測定した. その結果, 老化した根ほど呼吸速度は低くなり, 生育初期の垂直根を除いて水平根と垂直根の間での速度の差異は認められなかった. したがって, 本作物の養分吸収については水平根と垂直根の「質的」な差よりも, むしろ地中における不定根の「量的」な差, すなわち, 多量に存在する水平根が主要な役割を担うものと考えられた.