抄録
水稲の湛水土中直播栽培において重要な特性である土中出芽性に関し, 深度2cmに播種できるシーダーテープを用いた圃場検定を行い, 室内検定 (催芽種子を用い25°C, 播種深度2cm条件) と比較検討した. また, 両検定の相関関係を再確認するために, 約100品種の遺伝資源を用いて, 圃場検定と室内検定を行った. いずれにおいても室内検定と圃場検定の間に1%水準で有意な相関が認められた. また, 圃場検定において最も土中出芽率が高い品種は, 中国品種のTa Hung Kuであった. Ta Hung Kuは, 日本の栽培品種であるコシヒカリ, キヌヒカリ, どんとこいより有意に土中出芽率が高く, 圃場検定によって土中出芽性に関する新たな遺伝資源を得ることができた. Ta Hung Ku, どんとこいの交配後代F3系統を養成し, 同様の検討を行ったところ, 圃場検定において, F3系統の土中出芽率は0∼40%の変異を示し, Ta Hung Ku並の土中出芽率を示した系統が認められた. しかし, 室内検定によって分離系統を評価することは困難であったため, この遺伝資源の土中出芽性を選抜·評価するための室内検定を検討する必要がある.