日本作物学会紀事
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品種 · 遺伝資源
数種の栄養繁殖作物で近年育成された品種の近親交配の程度
吉田 智彦
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2003 年 72 巻 3 号 p. 309-313

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抄録
栄養繁殖作物のカンショ, バレイショ, イチゴなどの品種育成では, 限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる. そこで, これら作物で近年育成された品種の近交係数を計算した. 推論型言語であるPrologとパーソナルコンピュータを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した. カンショ品種のベニアズマ, シロユタカ, サツマヒカリ, ジョイホワイトの近交係数は0.017, 0.073, 0.140, 0.009であった. バレイショ品種のトヨシロ, ニシユタカ, コナフブキ, ベニアカリでは0.043, 0.072, 0.028, 0.018, イチゴ品種の女峰, とちおとめ, 章姫では0.172, 0.262, 0.223であった. バレイショでの値はカンショやイチゴより小さい値であった. カンショでは近交係数が0.1程度までは近交弱勢がみられず, 0.2を超えると近交弱勢が顕著になると思われるが, 本研究で得られた近交係数は, カンショでは近交弱勢の限界値以内, イチゴでは限界値を超えるものであった. 古い祖先品種の記録が正しくない可能性はあるが, 最近の育成品種では祖先品種の由来の違いによる計算値間に大差なく, ここで得られた近交係数の値は概ね正確だと思われる.
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© 2003 日本作物学会
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