日本作物学会紀事
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作物生理 · 細胞工学
高温乾燥風に対する耐性イネ品種の生理学的特徴
姜 東鎮呂 運尚呉 乗根姜 正勲楊 世準石井 龍一李 仁中
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2003 年 72 巻 3 号 p. 328-332

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抄録

本研究はフェーン現象下の気象を風洞装置を用いて再現し, 高温乾燥風に対する耐性イネ品種と感受性品種との水分状態とクロロフィル含量の差を調べたものである. 耐性品種として韓国農村振興庁嶺南農業試験場の盈徳出張所で選抜した日本型Naepung-byeo (NP), 感受性品種として同定されたオーストラリア原産の日本型Ilabong (IB) を供試し, それぞれ水田土壌をつめた1/1250aポットに移植し, 屋外自然条件下の湛水状態で生育させた. 3時間の高温乾燥風処理は出穂後4日目に行った. 穂の水ポテンシャルの変化は処理終了直後から顕著に現れ, NPでは処理開始前の-0.25 MPaに比べ, -0.75 MPaと大きく低下した. 一方, IBではさらに著しく, 処理開始前の-0.34 MPaから-1.53 MPaに大きく低下した. NPの穂の水ポテンシャルは, 処理終了後2時間目までは低下したが, 処理終了後6時間目には回復する傾向を示した. 葉身における水ポテンシャルは低下する傾向があったものの, 高温乾燥風処理による差は小さく, 品種間で有意な差は認められなかった. また, 穂の相対水分含量は水ポテンシャルと同様, NPでは高温乾燥風処理による低下はほとんど見られず, 処理終了後6時間目には回復する傾向を示した. しかし, IBでは処理終了直後の相対水分含量は処理開始前に比べて大きく低下し, 処理終了後6時間目では22%と極めて低かった. 穂のクロロフィル含量もNPで高く維持され, IBでは顕著に低下し, 処理終了後6時間目にはほとんどが白穂となった. このことから, 耐性品種であるNPは高温乾燥風に対し, 頴花で水分損失を防ぐ何らかの防御機構を有し, 時間の経過とともに回復したと考えられた.

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© 2003 日本作物学会
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