抄録
米粒の成分含量や物性を1粒単位で測定することが最近可能となり, これらの測定値と穂上の着生位置との関係を明らかにするための研究が進められている. そこで, イネの穂の分枝構造を模式的に図示し, 個々の穎花の持つ情報を穂上の着生位置に対応させて表示するためのプログラムを作成し, その有用性について検討を行った. 穂の分枝構造をリスト形式で記述することにより, その多様性に対応することが可能となった. 描画プログラムの作成には, 「パターン照合」や「単一化」などの特色を有するプログラム言語Prologを採用し, 再帰的呼び出し機能を活用した. 表形式で記録された既存の分析結果を有効に利用するため, それらをリスト形式のデータに変換するプログラムを作成した. さらに, 穎花の現存·退化といった定性的情報の表示に加えて, 新鮮重など定量的情報に対応した塗り分け機能をプログラムに追加した. 描画された模式図は, 枝梗の長さや穎花の形状という観点からは正確ではないが, 枝梗や穎花の相対的な位置は正しく表現されており, 穎花の定性的·定量的特性と着生位置との関係を直観的に把握する一助となる. さらに, この描画プログラムは, 同様の分枝構造を持つイネ属の穂や, イネの分げつ体系等の描画への応用も可能である.