日本作物学会紀事
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栽培
西日本暖地では北海道育成コムギ品種ハルユタカは高畦で栽培しても粒重が増加しなかった
高橋 筆島内 佳奈恵中川 悠子柴田 香織飯山 豪
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2003 年 72 巻 4 号 p. 377-383

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抄録

圃場の乾湿がコムギ品種ハルユタカおよびダイチノミノリの粒重に及ぼす影響を検討するため, 畦立て処理により高畦区 (35cm高) と低畦区 (5cm高) とを設けて, 収量性, 乾物生産特性, 群落構造ならびに稈の可溶性炭水化物含有率と窒素含有率を調査した. 子実収量は, 両品種とも高畦区が低畦区よりも高かったものの, 千粒重は両品種とも畦立て処理間に差がみられなかった. 個体群成長速度は, 両品種, 両処理区とも開花期後が開花期前より低くなり, とくにハルユタカの高畦区では開花期後に著しく低くなった. これは, 開花期後ではハルユタカで平均緑色面積指数 (GAI) が高畦区で低畦区の2倍以上と高かったにも関わらず, 純同化率 (NAR) が高畦区でほぼ0と極めて低かったためであった. 稈の可溶性炭水化物含有率も, 乳熟期のハルユタカでは高畦区の値が低畦区の2分の1と低く, さらに開花期の値に比べても低かった. 葉身の窒素含有率および群落条件での光合成速度は, ハルユタカでは上位2葉とも高畦区が低畦区よりも高かったものの, いずれもダイチノミノリに比べて著しく低かった. このように高畦処理は, 両品種とも生育初期から個体群の乾物生産を高めたものの, とくにハルユタカでは過繁茂を招き, 開花後の同化量が著しく低下したことで, 子実収量こそ増加したものの粒重は増加しなかった.

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© 2003 日本作物学会
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