日本作物学会紀事
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栽培
播種期によるコムギ主茎の葉,小穂および小花の分化数成立過程の変異
豊田 正範小林 洋介三好 祐介安村 直子楠谷 彰人浅沼 興一郎
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2004 年 73 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

西日本の暖地 · 温暖地で栽培されるコムギ3品種 (イワイノダイチ, さぬきの夢2000, チクゴイズミ) を3播種期 (早播き, 標準播き, 遅播き) で栽培した場合の葉, 小穂および小花の分化数の成立過程の変異を解析した. 走査型電子顕微鏡, 実体顕微鏡で調査した各器官の分化数の推移と有効積算温度との関係にモデル式を適用してそれぞれの分化速度と分化期間を推定し, これらと分化数との関係を検討するとともに, 分化期間中の平均気温, 平均日長時間との関係を考察した. いずれの品種も葉数は早播きほど多くなる傾向にあった. 全品種を込みにした場合, 葉数は有効積算温度を基準とした分化速度と分化期間から同程度の影響を受けていたが, 分化速度はいずれの品種も早播きほど速く, また, 平均気温と正の相関関係にあった. 秋播性程度がIVのイワイノダイチの葉の分化期間は, 全品種中, 早播きで最も長く, 遅播きで短かったが, これは春化に必要な低温に遭遇するまでの期間が早播きほど長くなるためと考えられた. 秋播性程度がI~IIのさぬきの夢2000およびチクゴイズミの葉の分化期間は, 平均日長時間と負の相関関係にあった. 播種期による小穂数の変異の傾向は品種で異なった. 小穂の分化速度と分化期間は, いずれも小穂数に対して一定の関係を示さなかったが, 両者の間には負の相関関係が存在した. 分化小花数の最大値はいずれの品種も遅播きほど減少する傾向にあり, 全品種を込みにした場合, 分化小花数の最大値は分化期間と正の相関関係にあった. また, 分化期間と平均日長時間との間に負の相関関係が認められ, 遅播きほど長日条件下で分化が進行するために分化期間が短縮し, 分化小花数が減少したと推察された.

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© 2004 日本作物学会
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