日本作物学会紀事
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栽培
水稲1株の全茎数と冠根数との関係
片野 學
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2004 年 73 巻 1 号 p. 6-9

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抄録

有効茎と無効茎からなる水稲1株の全茎数の多少は, 冠根数とどの様な関係にあるかは明らかにされていない. そこで, 1/2000aワグナーポットを用い, 全茎数の多少を著しく拡大するために, 施肥条件, 栽培品種などを変えて1株1本植えした. 有効茎および無効茎の判別ならびに伸長した冠根と“いじけ”根の識別が可能となる出穂期直後に根群を採集し, FAAで固定後, 冠根数を観察した. 1株全茎数が最小3本から最大85本に及んだ調査18株の全茎数と伸長した冠根数との間に認められた極めて高い有意な正の相関関係は, 全茎数30本を境にして異なっていた. 茎数1本当たりの伸長した冠根数の増分は, 全茎数が30本未満の場合には32.1本であったが, 30本以上の場合には9.4本であった. 全茎数30本を境にして, 2本の回帰直線の交点における1株全茎数は26.8本となり, 1株茎数が27本内外に達すると伸長した冠根数の増加が鈍化することが見出された. また, この交点における全茎数を, 上位根, 下位根およびP“要素”根別に見ると, それぞれ, 23.3本, 27.3本, および33.1本となっており, 冠根の伸長方向との関連性が見られた. さらに, 全茎数と冠根総数, すなわち, “いじけ”根と伸長した冠根の合計数との間には極めて高い有意な正の相関関係が見出され, 伸長した冠根数の場合とは異なり, 全茎数が30本の境界は認められなかった.

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© 2004 日本作物学会
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