日本作物学会紀事
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形態
カンショの塊根の肥大と形状の成立要因
―塊根形状の異なる2品種の比較―
佐々木 修西原 英典津曲 雄治下田代 智英
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2004 年 73 巻 1 号 p. 65-70

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抄録

塊根の肥大特性の異なる2品種のカンショ (アヤムラサキ,高系14号) を用いて, 生育に伴う塊根の肥大の特徴および形状の成立過程について検討を行った. 塊根収量および形状に関与する塊根数, 塊根長および塊根幅の3形質のうち, 塊根数と塊根長は肥大の初期 (挿苗後50日) にはほぼ決定していた. 塊根数は品種間で差は認められなかったが, 塊根長はアヤムラサキが高系14号より長い傾向を示した. しかし, 各個体に形成される塊根数および個々の塊根の長さはそれぞれ2~13個, 5~30 cmの範囲で著しく変動した. 一方, 塊根幅の増大は塊根長と密接な関係があり, 塊根長の長い塊根ほど塊根幅の増大速度は大きい傾向を示し, その程度は高系14号が, アヤムラサキより著しかった. 以上のような塊根長と塊根幅の生長特性をもとに塊根の形状 (幅長比:塊根幅/塊根長) の推移を見たところ, 肥大初期には塊根の長さにより, 形状の変動幅は大きかったが, 生育が進むに従ってその変動幅は次第に収束する傾向を示した. また, 生育に伴う幅長比の増大は高系14号がアヤムラサキより大きかったため, 最終的に高系14号は紡錘形, アヤムラサキは長紡錘形の塊根が多くなった. 以上のことから, カンショの塊根は肥大初期に決定する塊根数および塊根長の変動幅が著しいという欠点がある一方, 生育に伴う塊根の肥大はその形状が揃う方向に進むという望ましい特性を持っていることが推察された.

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© 2004 日本作物学会
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