日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
野生稲Oryza latifolia Desv.の葉緑体チラコイド膜の耐塩性
仲村 一郎東江 栄飛田 哲柳原 誠司野瀬 昭博村山 盛一本村 恵二
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2004 年 73 巻 1 号 p. 84-92

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抄録

我々は前報で野生種Oryza latifoliaは, 水稲の耐塩性品種として育成されたSR26Bよりも耐塩性が高いことを示した. その要因を明らかにするため, O.latifolia葉身の光合成速度, 及びチラコイド膜の酸素放出速度をNaCl存在下で測定し, 感受性品種O. rufipogonと比較した. O. rufipogonの光合成速度は, NaClによって大きく阻害され, 300mM, 及び655mM NaCl存在下では, それぞれ処理前の75%, 及び30%であった. 一方, O. latifoliaでは, 300 mM NaCl存在下では処理前とほとんど変わらず, 655mMで約60%まで低下した. チラコイド膜の耐塩性もO.latifoliaで高く, O.latifoliaでは酸素放出速度は655mM NaCl存在下で13%低下したが, O. rufipogonでは300mMで10%, 655mMで30%それぞれ低下した. チラコイド膜の耐塩性の要因を解析するために, チラコイド膜のタンパク質組成をSDS‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS‐PAGE) で調べたところ, O.latifoliaはチラコイド膜に20.3kDa, 及び22. 4kDaの本種に特異的なタンパク質を有していた. これらのタンパク質を二次元電気泳動 (2‐DE) でさらに調べたところ, 分子量20.3kDa, 及び22.4kDaのタンパク質はそれぞれ少なくとも二つ, 及び三つのタンパク質を含んでいた. また, スポット番号28, 29及び34の3種はまだ報告のない機能未知のタンパク質であった. これらの結果から, O.latifoliaは, チラコイド膜の耐塩性が高く, 高NaCl存在下でも光合成能力を維持することができること, またチラコイド膜に本種に特異的なタンパク質を有していることがわかった.

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© 2004 日本作物学会
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