日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
斜線刈取りによる水稲収量簡易速決診断法の改善
-特に比重1.06で選別された稚苗移植水稲の精籾の籾摺歩合について-
伊田 黎之輔
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2004 年 73 巻 3 号 p. 343-347

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抄録

稚苗移植水稲の圃場試験区規模(1区面積10.71m2, 総株数238)における収量査定を一定の信頼度および精度で行うための「斜線刈取法」による調査個体数の決定と, これらの調査個体から選出される代表株を対象にして行う「水稲収量簡易速決診断法」の籾摺歩合について検討した. 238株の母集団から無作為抽出した30株の収量および収量構成要素の変動係数(CV)は, 収量(精籾重)≒総穎花数>穂数>平均1穂穎花数>登熟歩合>精籾千粒重であった. 収量のCVは21%を示し, これを信頼度95%, 精度5%で査定するための調査個体数は1区当たり52株を要する. 収量査定のシミュレーションの結果, 目標の信頼度と標本数に応じた精度により, 代表株の収量から試験区の実際の平均収量をよく推定できた. 次に, 1979~2001年に農業試験場および現地の試験圃場で品種, 作期, 施肥量などを異にした稚苗移植水稲(不完全葉を第1葉とする3.0~3.6葉苗)および成苗移植水稲(同6.5~7.0葉苗)の籾摺歩合について検討した. 稚苗移植水稲において, 比重1.06の塩水選により選別された代表株の精籾重から精玄米重に換算するための籾摺歩合は0.824±0.009(平均値±標準偏差)であり, そのCVは1.1%と極めて小さいことから, 一般的な換算係数として使用できることがわかった. 一方, 成苗移植水稲では0.844±0.005(CV=0.6%)であり, 両者間には統計的に有意な差が認められた. このことから, 従来報告されていた籾摺歩合0.840は成苗移植水稲における固有の換算係数と判断された.

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© 2004 日本作物学会
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