日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
シロクローバを利用したスィートコーンのリビングマルチ栽培体系における窒素フローの推定
三浦 重典渡邊 好昭小林 浩幸小柳 敦史
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2004 年 73 巻 4 号 p. 436-442

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抄録
リビングマルチ栽培には土壌侵食の防止や雑草抑制効果などのメリットがあるが,作物との間に窒素の競合が起こることが懸念されていることから,シロクローバを利用したスィートコーンのリビングマルチ栽培体系における窒素の流れを調べた.試験を実施した3年間では,スィートコーンの収量及び窒素含有量はリビングマルチ栽培と慣行栽培で同じであった.シロクローバの窒素含有量は,播種時には6.85 gm-2,中間刈取り時には4.87 gm-2であり,両者の計である11.72 gm-2の窒素が刈取りによって土壌中に供給されると考えられた.一方,スィートコーン栽培期間中のシロクローバの窒素吸収量は7.11 gm-2であり,そのうちの5.10 gm-2が固定由来窒素と推定され,土壌及び肥料由来窒素量は1.55 gm-2と少なかった.土壌浸透水量と硝酸態窒素濃度の積により算出した窒素溶脱量は,3年間の平均でリビングマルチ栽培区が慣行栽培区より少なかった.重窒素を利用した15Nトレーサー試験では,スィートコーンの吸収した窒素のうち27.3% (2.48 gm-2) がシロクローバ刈取り残さ由来であり,土壌及び肥料由来窒素量は6.62 gm-2であった.これらの結果より,リビングマルチ栽培ではシロクローバの刈取りにより土壌に供給された窒素の多くがスィートコーンに移行しており,一方で土壌及び肥料から収奪される窒素量及び窒素溶脱量が少ないことから,スィートコーンとシロクローバの間の窒素に対する競合は小さいと考えられた.リビングマルチ栽培では,窒素フロー図から推定した土壌からの窒素のアウトプット量が慣行栽培より2 gm-2程度少なく,窒素の施用量を低減できる可能性が示唆された.
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© 2004 日本作物学会
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