日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
ダイズ幼植物における茎基部からの出液速度に関与する要因
馬 啓林山口 武視中田 昇田中 朋之中野 淳一
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2004 年 73 巻 4 号 p. 431-435

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抄録

作物茎の切断面より溢出する出液現象は能動的吸水に基づくものであるので,これを用いて根の生理的活性を把握できる可能性がある.そこで,ダイズ幼植物を用いて,出液速度に影響を及ぼす要因を明らかにして,根の呼吸速度と出液速度との関係を検討した.土壌含水比が40%以下になると,出液速度が指数関数的に減少し,30%以下ではほとんど出なくなった.また,早朝や夕刻よりも午前10時に切断した場合が最も高い値であった.茎切断後の出液速度は急速に低下し,6時間後にほぼ一定となった.出液速度は地温の影響を受け,25℃~30℃ではほぼ一定の値を示した.生育に伴う出液速度の変化は,花芽分化期の出芽後45日ごろ最大となり,その変化は呼吸速度の推移と一致した.土壌水分を約55%,地温25℃に保ち,午前10時に切断後1時間の出液速度は,個体当たりの根の呼吸速度と密接な関係にあることが認められた.個体当たりの根の呼吸速度は「根重当たり呼吸速度×根重」で示されるので,この2要因について検討した結果,出液速度には根重の方が強く関与するが,同じ根量であれば,根の呼吸活性の高いものほど出液速度が高いことを明らかにすることができた.

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© 2004 日本作物学会
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