日本作物学会紀事
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栽培
施肥法を異にするミャンマーの代表的水稲品種Manaw Thu Khaの生育と収量性の特徴
Aye Aye Han梅崎 輝尚江原 宏長屋 祐一森田 脩
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2005 年 74 巻 3 号 p. 260-269

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抄録
ミャンマーの代表的な高収量イネ品種のひとつであるManaw Thu Kha(MTK)の生産現場での低収量性の原因解明のために施肥法に着目し, MTKと日本品種のコシヒカリ(KH)と日本晴(NB)をミャンマーの一般的な施肥法(M区)と日本の施肥法(J区)とにより三重大学内実験水田で2001年から3年間栽培実験を行った. 施肥試験区として, M区には基肥を与えず移植後30, 60日目に2回尿素を窒素成分量で合計11.4 kg/10 a追肥するM1区と2回目追肥時に同量の尿素と2.2 kg/10 aのリン酸を与えたM2区, J区には複合肥料を窒素成分量で基肥6 kg/10 aと追肥2回各2.5 kg/10 aを施したJ1区, J1区の1/2量を施したJ2区の計4区を設けた. 結果は次のとおりである. M区では尿素を追肥すると10日間でMTK, KH, NBとも草丈は急伸長し, 施肥に敏感に反応した. また, M区はJ区と比較して3品種ともに移植後の分げつの発生が遅れ, 最高分げつ期までの所要日数が大きかった. 最高分げつ数はMTKではJ2区は低かったがM区とJ1区に差がみられなかったのに対して日本の2品種はJ区に比べてM区が有意に少なく, 供試品種によって施肥法の違いが分げつの発生に大きく影響した. MTKの主稈葉の葉色値は第13~14葉まではM区, J区ともKH, NBより有意に低く, 葉色が薄かった. MTKの第14葉のSPAD値はNBより追肥後7日目以降有意に低く推移した. そして, MTKでは追肥後5週目以降急激に低下したが, NBは出穂終了後の追肥後6週目以降も追肥時と同程度の値を維持した. 出穂状態はMTKはM区, J区ともにKH, NBと比較して出穂期間が長く, 出穂のピークが2回認められた. 出穂期のMTKの群落はNBの群落に比べて葉面積指数が大きく, 吸光係数も大で, 受光態勢が悪かった. MTKは尿素だけを追肥したM1区では穂数が多い反面, 1穂籾数の減少や登熟歩合の低下がみられた. しかし, リン酸を同時に追肥したM2区はM1区よりも1穂籾数が多く, 登熟歩合も高く, J1区と同程度の精籾重が得られた.
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© 2005 日本作物学会
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