抄録
本研究は, 輪換田における土壌の窒素発現と水稲(Oryza sativa L.)の窒素吸収を一毛作田と比較することによって明らかにすることを目的とした. 調査は, 2000年から2003年, 奈良県桜井市大西の窒素無施肥条件下の試験区水田を対象に実施した. これらの水田は, 水稲-コムギ-ダイズの2年3作の田畑輪換を行う二つのブロック(総面積29 ha)と, 水稲一毛作を行う水田(0.3 ha)に分かれている. 輪換田土壌の窒素発現量は, 一毛作田と比較して増加せず, それは輪換が繰り返されることで全窒素, 全炭素が低くなることが原因と考えられた. 出穂期と成熟期の水稲による窒素吸収率と水稲窒素保有量は, 一毛作田に比較して輪換田で高くなり, 1穂頴花数の増加によって輪換田水稲が多収となった. 調査期間内において, 輪換田土壌の窒素発現量は年次間で一定であるが, ブロック間で大きく異なった. このブロック間差の一因として輪換田間で異なる土壌の物理化学性とブロック間で異なる水稲作付け前の気象条件が考えられた. このようなブロック間変異は, 田畑輪換での土壌の物理化学性の空間変異に応じた水稲の窒素施肥管理に有為な技術情報であると考えられた.