日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
根粒超着生ダイズ品種作系4号の宮城県における生育・収量
— 緩効性肥料の効果 —
前川 富也国分 牧衛
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2005 年 74 巻 3 号 p. 350-356

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抄録

根粒超着生ダイズ品種作系4号は, 窒素固定能と葉面当り光合成能が高いことから多収のポテンシャルを持つと期待される. 本品種の宮城県内における収量性を窒素の肥効パターンの影響の面から検討するため, 年次と場所の異なる3つの圃場試験(試験1~3)を行った. 供試品種は作系4号のほか, 親品種エンレイおよび根粒非着生系統En1282を用い, 肥料は速効性肥料(尿素)と緩効性肥料(LP-70あるいはLP-100)を用いた. 3種類の肥料効果を比較した試験1(2001年, 仙台)では, 作系4号とエンレイの収量はLP-100>LP-70≒尿素であったのに対し, En1282では尿素>LP-70>LP-100であった. 尿素とLP-100を用いた試験2(2002年, 仙台), 試験3(2002年, 鳴子)の結果では, 開花期, 子実肥大期における地上部乾物重はLP-100区が尿素区を上回る傾向がみられ, この傾向は作系4号において顕著であった. 作系4号のLP-100による乾物重増加は, 葉面積指数の増加に依存していた. 試験2, 3の収量は作系4号ではLP-100区が尿素区を上回ったが, エンレイとEn1282では肥料の種類の効果はみられなかった. 供試した3品種・系統の収量は, エンレイ>作系4号>En1282の傾向がみられ, 開花期と子実肥大期の乾物重の差を反映していた. 以上のように, 作系4号に対する緩効性肥料による増収効果はある程度認められるが, さらに多収を目指すには, 生育前半の生育量を増大させる他の栽培手段が必要である.

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© 2005 日本作物学会
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