日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
テンサイ根腐病による根冠部のアミノ態窒素含量の変化
大潟 直樹高橋 宙之田口 和憲岡崎 和之中司 啓二
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2005 年 74 巻 3 号 p. 357-363

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抄録
テンサイ根部に含まれるアミノ態窒素は製糖品質を低下させる有害性非糖分の一つである. 本実験では, 圃場接種により根腐病が発病したテンサイO型系統の根冠部に含まれるアミノ態窒素含量および根中糖分, また, これらの分布を経時的に調査した. その結果, 根腐病抵抗性の強弱にかかわらず, 根冠部のアミノ態窒素含量は, 根腐病の発病に伴い増加した. また, 根腐病抵抗性系統は, 無接種下においても感受性系統よりアミノ態窒素含量が2 meq/100 g以上と多かった. 一方, 根冠部の根中糖分は根腐病の発病により低下したが, 抵抗性系統は感受性系統よりも低下の程度が少なかった. 次に, 発病により, 根部のアミノ態窒素の分布は無接種下の分布から変化し, 中心部維管束帯付近で多く, 表皮側で明らかに少なかった. また, 根中糖分は発病によりアミノ態窒素と同様に表皮側が低下した. 以上の結果から, 根腐病の発病はテンサイの根中糖分を低下させるとともにアミノ態窒素含量を増加させ, 製糖品質の低下につながることが明らかとなった. アミノ態窒素含量は, 根腐病抵抗性に関与しており, 製糖品質の優れた抵抗性品種の育成にとって障壁になる可能性がある.
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© 2005 日本作物学会
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