抄録
秋まきコムギ品種ホクシンにおいて低アミロコムギの発生を予測するため, 低アミロ耐性(アミロ値低下の原因であるα-アミラーゼ活性が低アミロ域まで高まるのに必要な降雨日数で, 何日の降雨で低アミロコムギになるかを表す)を休眠性の指標として, 成熟期前後の気象条件との関係を検討した. その結果, 低アミロ耐性は成熟期1週間前からの降雨および気温と負の相関が認められ, 成熟期以降は経過日数および降雨と負の相関が認められた. 連続降雨があった場合, 低アミロ耐性は1日に1降雨日数程度低下するが, 15°C, 20°C, 25°Cでは低温ほど降雨の影響が大きい. これらを組み込んで表計算ソフト上で稼働する予測式を開発した. この予測式は成熟期1週間前からの平均気温, 降水量, 日照時間, 平均湿度を入力すると, 成熟期以降の低アミロ耐性を日単位で計算する. 予測式の圃場採取試料に対する適合度は95%以上と高く, 低アミロ耐性が1降雨日数以上では低アミロコムギ発生の危険性はほとんど無く, 0~1降雨日数では発生の危険性がやや高まり, 0降雨日数未満では低アミロコムギ発生率は大きく高まった. 本予測式は健全なコムギを収穫する適期を高精度に予測可能であることから, 収穫時期を判断する上で重要な情報になり得る.