育成系統の遺伝的背景を明らかにし, 今後の品種育成について検討した. 農業・生物系特定産業技術研究機構作物研究所において育成されている関東系統229系統の相互の近縁係数を計算し, クラスター分析を行い, 関東系統を分類した. 関東系統は, コチカゼ, 日本晴との近縁係数が高い古い育成系統群とコシヒカリとの近縁係数が高い新しい育成系統群に分類できることがわかった. また, 新しい育成群の中に, コシヒカリとの近縁係数が比較的低い群があることがあることがわかった. 関東系統22系統とコシヒカリとの近縁係数と食味および葉いもち発病程度との関連を検討した結果, コシヒカリとの近縁係数と食味, 葉いもち発病程度との相関は低いことが明らかとなった. コシヒカリとの近縁係数が比較的低く, 良食味でいもち病に強い関東系統の改良を進めるとともに, 外国稲などから有用遺伝子源を導入することで, 遺伝的背景の広い品種の育成が可能と考えられる.