日本作物学会紀事
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ラッカセイの莢の構造及び物理的特性と莢つき種子の寿命との関係について
前田 和美
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2006 年 75 巻 4 号 p. 518-525

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抄録

莢つきラッカセイ種子の寿命が小粒品種で優れることと莢の役割との関係を2実験で調べた. 実験1 : 外果皮, 中果皮, そして, 内果皮からなる未熟莢実の莢で, 外果皮と中果皮を加えた厚さは, 極小粒・薄莢の品種Chicoでは大粒・厚莢の品種ナカテユタカの約60%であったが, それぞれの細胞層の数には大きな差異が認められなかった. 外果皮と内果皮のほとんどが脱落, 崩壊している完熟莢実の莢で大部分を占める中果皮では, その最内層の厚膜組織が維管束の周辺に派生して隔壁状に発達していた. そして, 維管束と維管束の間に破生間隙様の空隙が観察されたが, それと莢の水分やガス交換におけるフィルター機能との関係が示唆された. 実験2 : 乾燥莢実1個あたりの, 莢実重, 子実重, 子実容積(VS), 胚室容積(VOC), 莢実表面積(PSA), 莢重(SHW), 莢の容積(PSA×ST), 及び胚室内空隙容積(VOC-VS)は, いずれも大~中粒性品種群h(バージニア・タイプと亜種間交雑育成の22品種)が小粒性品種群f(スパニッシュ・タイプ, 18品種)よりも約2倍と大きかったのに対して, 莢実表面積/胚室容積比は品種群fが品種群hよりも約30%大きく, 莢の厚さ(ST)では両品種群の差が小さく, そして, 莢密度(SHW/PSA×ST)では差がみられなかった. 莢つき種子の長期発芽力保持の品種間差異とその機構については, 莢の構造や物理的特性の差異が子実の水分やガス交換の動態に及ぼす影響の面からさらに詳しく調べる必要がある.

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© 2006 日本作物学会
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