日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
コムギの登熟過程の温度反応に基づく生理的成熟期と子実含水率の推定法
中園 江井上 君夫脇山 恭行大原 源二
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2006 年 75 巻 4 号 p. 526-534

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抄録

気象データよりコムギの登熟の進度を推定することを目的として, 農林61号およびシロガネコムギの2品種を供試し, ガラス室で登熟期間の平均気温を13℃から25℃の範囲で変化させ, 子実の乾物重および含水率の推移を調査した. 子実の乾物重増加過程はロジスティック式によくあてはまり, パラメータを用いて最大粒重, 増加速度, 増加期間等を算出し比較した結果, 高温下での粒重の低下は, 主に乾物集積期間の短縮に起因するものと考えられた. 子実への乾物の集積がほぼ完了し, 粒重が最大となる生理的成熟期の含水率の平均値は両品種とも約41%となり, 従来からいわれている生理的成熟期の目安となる含水率40%が, 気温により登熟のパターンが変化した場合においても成り立つことが示された. 開花期を0, 生理的成熟期を1とする発育指数(DVI)の考え方を用いて, 気温に対する発育速度(DVR)の関係式を求め, 圃場における生理的成熟期の推定を行った結果, 二乗平均平方根誤差は2.1日であった. また開花期から生理的成熟期までの子実含水率は登熟の進度に依存し, DVIとの間に曲線の関係が得られた. この関係式を用いて推定された圃場の子実含水率は二乗平均平方根誤差が1.7%と精度が高く, 気温データを用いて生理的成熟期および子実含水率が予測可能であることが示された. さらに, 胚と胚乳の発育段階を観察した既往の文献をもとに, 登熟ステージの積算気温を算出して本研究の結果と比較した結果, 穂発芽と関連の深い種子の休眠は, 含水率がおよそ50%の時期から形成されることが示された.

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© 2006 日本作物学会
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