日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
群馬県稲作農家の低コスト・省力化技術導入に対する評価と意識及び普及に関する調査
高橋 行継吉田 智彦
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2006 年 75 巻 4 号 p. 542-549

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抄録

稲作の低コスト・省力化技術への関心を探るために, アンケート調査を実施した. 対象は群馬県平坦部および中間地帯の稲作農家とし, 稲作経営面積や専業・兼業別, 経営主の年齢等のバランスも考慮しながら, 県内16市町村計109戸に対して戸別訪問面接調査法で実施した. その結果, 筆者らがこれまでに検討してきた低コスト・省力化関連の諸技術の普及率は概して低かった. この要因として, 農家側の栽培技術の現状や新技術への考え方に関する試験研究機関の認識不足, 農家の固定概念から生じている新技術に対する誤解や不安, 普及指導機関の情報伝達不足などがあげられた. 稲作農業の主力である50~60歳代は, 自身の技術に自信を持つ経営主が多く, 新技術に対する関心はあるものの, 積極的に導入しようとする意欲は低かった. 一方, 70歳以上の高齢者農家や稲作主体の兼業農家では, 稲作経営の維持のために省力化技術に対する関心は概して高く, 導入に前向きな農家もみられた. 技術の普及のために対象農家の絞り込みや方法の検討が必要である. 農家は技術情報の入手先として普及指導機関, 農業協同組合に次いで「口コミ」をあげており, 技術を地域に波及させるための鍵を「口コミ」が握っていると考えられた. 新技術普及のためには, 普及指導機関が農家に正確な技術情報を提供し, 正しく理解してもらうことが必要である. さらに展示圃において農家に自ら新技術を体験し, 正しい技術を身につけてもらうことで栽培を必ず成功させ, 「口コミ」による波及効果を狙うことが望ましいと考えられた.

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© 2006 日本作物学会
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