日本作物学会紀事
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品質・加工
秋播性コムギの冬期播種栽培がコムギの加工品質に及ぼす影響
荻内 謙吾
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2007 年 76 巻 2 号 p. 226-231

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抄録

秋播性コムギ(品種「ナンブコムギ」, 「ゆきちから」)を根雪前に播種する冬期播種栽培が, アミログラム特性や製粉性, 60%粉特性, 製パン性, 製麺性等の加工品質に及ぼす影響について調査し, 秋播栽培したものと比較検討した. 試験区は二つの異なる栽培法として, 12月中旬~下旬播種の冬期播種栽培区(以下, 冬期区という)と10月上旬播種の秋播栽培区(以下, 秋播区という)を設置した. 冬期区と秋播区で, 子実の外観品質やアミログラム最高粘度に有意な差はみられなかった. 冬期区は秋播区よりも成熟期が 3~5日遅くなるものの, 多雨条件となる前の 7月上旬の収穫が可能であり, 熟期の遅れによる降雨の品質への影響を回避できた. 冬期区は秋播区に比べて千粒重が軽かったが, 容積重は秋播区と同等以上であり, 製粉特性や粉の色相, ファリノグラム特性値は両区で有意な差がみられなかった. また, 原粒の灰分含有率は冬期区が秋播区よりも低く, タンパク質含有率は統計的に有意ではないものの冬期区が秋播区と同等ないし高い傾向であった. 製パン特性やゆで麺特性は統計的な差は認められなかったが, 「ゆきちから」では冬期区のパン体積やパンの合計点が秋播区を上回った. 冬期区のタンパク質含有率の向上は, 冬期区の施肥レベルが秋播区に比べて高いことに起因し, それが製パン性の向上につながったものと考えられた. 以上のことから, 秋播性コムギの冬期播種栽培は, 慣行の秋播栽培と比較して生育相が大きく異なるものの, 子実の外観品質のみならず, アミログラム特性や製粉性, 製パン性, 製麺性といった加工品質も慣行の秋播栽培と同等以上を確保できると判断された.  

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© 2007 日本作物学会
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