日本作物学会紀事
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形態
水稲における登熟性の品種間差に関する研究
-形態形質との関係-
塩津 文隆劉 建辺 嘉賓豊田 正範楠谷 彰人
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2008 年 77 巻 2 号 p. 183-190

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抄録

水稲における形態形質と登熟性との関係を, 中国および日本産の日本型品種と日印交雑型などの多収性品種を用いて調査した. さらに, 得られた結果を基に重回帰分析を行い, 形態形質によって登熟性がどの程度評価できるか検討した. 形態形質との単相関関係を調べたところ, 登熟歩合(R)は収量キャパシティや穂の構造に関わる形質との関係が強く, 精籾比重(S)は乾物生産に関わる特性との相関が強かった. さらに調査した形態形質の中から, 1穂籾数(X1), 穂首節間長(X2), 穂数(X3), 穂首節間直径(X4), 成熟期の止葉角度(X5)を選び, RにはX1とX2, SにはX3, X4およびX5をそれぞれ説明変数とする重回帰分析を行った. その結果, Rに対しては0.584***, Sに対しては0.539***の重相関係数が得られ, 用いた形態形質によってそれぞれの品種間差の30~35%程度が説明できた. また, RにはX1とX2が約9 : 10, SにはX3, X4, X5が約5 : 4 : 3の割合で影響していると推測された. これらより, 本試験で選んだ形態形質は, 登熟性に関する初期段階での大まかな選抜指標として役立つものと判断した.

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© 2008 日本作物学会
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