日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
長野県で発生した雑草イネ(トウコン)における脱粒性の推移と脱粒籾の発芽能力
細井 淳牛木 純酒井 長雄青木 政晴手塚 光明
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2008 年 77 巻 3 号 p. 321-325

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抄録

近年, 長野県内の一部地域では, 「トウコン」 と呼ばれる雑草化した赤米(以下, 雑草イネ)の発生が拡大し, 問題となっている. 本研究では, 脱粒籾による漏生や埋土種子の増加を防ぐ観点から, 雑草イネの手取り除草による防除適期を明らかにすることを目的として, 県内各地から収集した雑草イネの脱粒性の推移と脱粒籾の発芽能力について調査した. 防風された戸外で栽培した雑草イネの触診による調査では, 出穂後約2週間目から脱粒する籾が確認され, 3~4週間目に1日あたりの脱粒籾数が最も多くなり, 約1ヶ月間にわたって脱粒が継続した. 一方, 圃場条件下で栽培した雑草イネの観察による調査では, 雑草イネは出穂後約2週間から1ヶ月の間に自然脱粒を開始した. また, 出穂が早い集団ほど出穂後短期間のうちに自然脱粒を開始する傾向にあった. 脱粒した時期にかかわらず, 脱粒した籾は帯緑籾を含めて80%以上の発芽能力を有し, 約0.1~0.2%の籾は深い休眠性を有していた. 以上の結果から, 脱粒した籾からの漏生と埋土種子の増加を防ぐためには, 雑草イネの出穂後2週間以内に手取り除草を行うことが発生密度の低減効果を向上させる上で重要であると考えられた.

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© 2008 日本作物学会
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