抄録
新潟県が開発した巨大胚水稲品種「越車」の育苗における殺菌剤の施用, 加温出芽, プール育苗及び播種量について検討し, 機械移植による苗の植え付け精度を調査して, その実用性を評価した. 「越車」の種子発芽率は98%であったが, これを育苗床土中に播種したところ, その正常出芽率は67%に低下した. 育苗時における殺菌剤の施用及び濃度を検討したが, 「越車」の出芽率及び苗立ち率を向上させる効果は認められなかった. 出芽, 育苗方法及び播種量を検討した結果, 加温出芽の効果は小さかったが, プール育苗では「越車」の草丈や根長が増し, 苗マット強度も高まる効果が認められた. 「越車」において, 慣行育苗体系並の苗立ち数を確保するためには, 乾籾300g/箱以上の播種が必要であった. 乾籾300g/箱播種, 無加温出芽, プール育苗によって養成した「越車」の稚苗は, 「コシヒカリ」と同等の正常苗立ち数及び実用上十分な苗マット強度を有していた. この苗を機械移植し, 植え付け精度を調査した結果, 欠株率は9.3%に達し, 「コシヒカリ」の約4倍であった. 不出芽籾が植え付け部位に停滞し, 浮き苗の発生原因となっている可能性が考えられた. 今後, 欠株の発生率を減らす育苗技術についてのさらなる検討が必要と考えられた.