日本作物学会紀事
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栽培
北海道北部地域における春まきコムギ「春よ恋」に対する開花期以降の尿素葉面散布が子実タンパク質含有率と収量に及ぼす効果およびその変動要因
佐藤 三佳子五十嵐 俊成櫻井 道彦鈴木 和織柳原 哲司奥村 正敏
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2009 年 78 巻 1 号 p. 9-16

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抄録
春まきコムギにおける開花期以降の尿素葉面散布が, 収量, 子実タンパク質含有率に与える効果と, その効果が栽培条件の違いによりどのような影響を受けるか検討した. 北海道北部地域3地点でパン用春まきコムギ「春よ恋」を様々な窒素施肥条件下で栽培し, 開花期以降に尿素葉面散布(1回につき窒素成分で0.92 g m-2, 計2.76 g m-2)を行った. その結果, 開花期以降3回(開花期, 開花期から7日目, 開花期から14日目)の尿素葉面散布は, 硫安土壌施用よりも安定的にタンパク質含有率を向上させる効果があり, 同時に千粒重と収量を増加させる傾向が認められた. ただし, 倒伏や生育途中での葉の黄化が発生した場合, 尿素葉面散布の効果は劣った. 尿素葉面散布区のタンパク質含有率(y)は, 無散布区のタンパク質含有率をx(%)とすると, y=0.790x+3.6(9.6<x<13.9, n=25, r=0.973, p<0.01)の回帰式で示された. すなわち, 無散布区のタンパク質含有率が高くなるような条件下では, 尿素葉面散布の効果は低減し, 逆に, タンパク質含有率が低くなるような条件下では, 効果が高まることが明らかとなった. タンパク質含有率は窒素施肥条件に影響されることから, 窒素施肥条件の多少により尿素葉面散布の効果は変動すると推測された.
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© 2009 日本作物学会
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