寒冷地においてエアーアシスト条播機と鉄コーティング種子を利用した直播栽培法を確立する目的で,湛水直播栽培における鉄コーティング種子の防鳥効果とその要因について検討し,湛水土中播種条件における鉄コーティング種子の出芽・苗立ち特性を催芽種子および過酸化カルシウムコーティング種子と比較した.鉄コーティング種子は,圃場条件において過酸化カルシウムコーティング種子に比べて防鳥効果があることが確認された.この要因の一つとして,鉄コーティング種子表面の色差は,過酸化カルシウムコーティング種子に比べてL*値(明度)が小さく,酸化に伴ってa*値とb*値が大きくなる(赤みと黄みが増す)ことによって土壌表面と似た色となるため,鳥害が生じにくいことが示唆された.一方,鉄コーティング種子は過酸化カルシウムコーティング種子に比べて低温条件や播種深が深くなるのに伴って出芽・苗立ちが遅れ,出芽・苗立ち率は低下して初期生育量が小さくなることが示唆された.以上の結果,鉄コーティング種子を利用する場合には表面播種とし,寒冷地では出芽・苗立ちを早進化させる技術の導入が必要であると考えられた.