抄録
栃木県農業試験場で育成したビール醸造用二条オオムギ品種について,家系分析を行った.育成品種と祖先品種および主要品種との近縁係数を計算した結果,育成品種とはるな二条の近縁係数が最も高く(平均0.457),次いで育成品種とミサトゴールデン(同0.442),育成品種とゴールデンメロン(同0.396)であった.育成品種について総あたりで近縁係数を計算した結果,お互いの近縁係数は0.115~0.856まで広く分布した.この近縁係数を用いてクラスター分析を行った結果,遺伝的多様性は育成当初からあまり広がっていないと推察された.農業特性の結果からも育成品種と近縁係数の高いはるな二条は醸造適性だけでなく収量や成熟期にも影響を与えていることが明らかとなった.育成品種と病害抵抗性母本との近縁係数では,0.125~0.008と極めて低いことが判明した.今後,育成品種の遺伝的背景が狭くなる危険性を回避し,遺伝的背景を拡大するためには,新たな遺伝資源の探索・導入を図るとともに家系図や近縁係数を考慮しながら育種計画を立てることにより,多様性を維持した効率的な育種が進められるものと考えられる.