抄録
深水栽培による籾数制御と草姿の改善により,水稲の登熟期における高温による白未熟粒の発生抑制を試みた.2004年から2007年に,水稲3品種(初星,ササニシキ,コシヒカリ)を分げつ盛期から最高分げつ期にかけて水深18 cmで深水処理し,生育,収量と白未熟粒割合を調査した.深水処理により, 2次分げつおよび上位1次分げつといった弱小分げつが減少して,強勢な下位の1次分げつの穂を中心とした分げつ構成となり,有効茎歩合が高まった.その結果,深水処理により穂数は減少したが,一穂籾数と玄米千粒重が増加し,年次変動はみられたが,慣行栽培と同程度の収量が得られた.深水処理により白未熟粒発生が抑制され,特に,乳白粒の発生を顕著に抑制した.また,深水栽培は,オープントップチャンバーによる高温処理においても白未熟粒発生を抑制し,高温による品質低下防止に効果があった.この効果は,高温登熟耐性の弱い品種ほど顕著であった.しかし,深水処理は茎数を減少させるため,十分な茎数が確保できない場合には減収した.このため,高品質米の収量確保には,有効茎数を確保してから深水処理を開始することが必要であり,深水処理開始時の茎数が330本/m2程度確保できれば,慣行栽培と同程度の収量と,白未熟粒発生抑制の両立が期待できる.